
人間関係と、職場で「平気なふり」をすること
0. まえがき
みなさんこんにちは。ご覧いただきましてありがとうございます。
スタッフの澤村永太郎です。今年もいつの間にかセミが鳴る…あっというまに夏。
2026年もあと4カ月もないという…ほんとに驚きますよね。みなさんも季節に振り回されずに日々を過ごせたらいいですね💦
さて、今回も無事に発達ゲイ会が開催できたのでご報告をさせていただきます。
1.開催概要
今回の自助会「ウェルカム」では、仕事や人間関係について話し合いました。
特に多く話されたのは、「職場の人とどこまで仲良くするか」「つらくても平気なふりをしてしまうこと」「限界になる前にどう相談するか」といったことです。
自助会では、何か一つの正解を決めることよりも、それぞれの経験や工夫を持ち寄ることを大切にしています。
今回も、参加者によって考え方や経験はさまざまでした。
開催日:8月8日
開催形式:対面
3部構成で開催
今回の主なテーマは次の3つです。
第1部:仕事とプライベートの人間関係
職場に友達は必要なのか。仕事と私生活の人間関係をどう分けるか。
第2部:職場での振る舞い
障害や自分の特性を伝えるかどうか。つらくても「平気なふり」をしてしまうこと。
第3部:限界になる前に相談すること
一人で抱え込まないための方法や、医療機関の選び方、生活が崩れたときの立て直し方などについて話しました。
2.今回話されたこと
仕事とプライベートの人間関係
職場の人との距離については、人によってかなり考え方が違いました。
ある参加者は、
「職場に親友を作る必要はないけれど、仕事で困ったときに話せる人が何人かいると助かる」
と話しました。
その人は、感謝やおわびを伝えるときに、安いお菓子を渡すことがあるそうです。
お菓子そのものが大切なのではなく、
「ありがとう」
「この前はごめんなさい」
という気持ちを伝えるきっかけとして使っているとのことでした。
別の参加者は、
「職場の人は友達ではない」
と考えていました。
仕事中は、仕事をするための役割を演じている感覚があり、「素の自分を全部出さない方が楽」と話していました。
一方で、人との距離をうまく調整できずに悩んだ経験を話した参加者もいました。
一人の同僚を頼りすぎてしまい、相手から「少し距離を置きたい」と言われたことがあるそうです。
本人にとっては、人との距離をどこまで近づけてよいのか判断すること自体が難しいという話でした。
また、職場以外の人間関係についても話題になりました。
ある参加者には、同じ地域で暮らす知人同士の集まりがありました。
そこでは、仕事の相談をしたり、病気になったときに食べ物を届けてもらったり、留守中にペットの世話を頼んだりすることがあるそうです。
役所や福祉サービスだけではなく、普段の人間関係に助けられているという話でした。
職場で「平気なふり」をすること
今回、何度も出てきた言葉の一つが、
「平気なふりをする」
ということでした。
障害や発達特性を職場に伝えるかどうかについても、参加者によって考え方が違いました。
ある参加者は、現在の収入や、転職の難しさなどを考えて、障害を職場には伝えずに働いていると話しました。
一方で、自分の障害や特性を会社に伝えて働いている参加者もいました。
ただし、会社に伝えているからといって、すべて楽になるわけではないという話もありました。
周囲から「仕事ができる人」と思われるように頑張りすぎてしまい、本当はつらくても、
「大丈夫です」
「できます」
と振る舞ってしまうことがあるそうです。
その結果、仕事中はなんとか動けても、休みの日に何もできなくなるほど疲れてしまう参加者もいました。
ある参加者は、自分の状態を、
「平日に元気を前借りしている感じ」
と表現していました。
仕事中は薬を飲みながら何とか動いているものの、休日になると寝込んでしまい、お風呂、掃除、食事などが難しくなることがあるそうです。
薬については、あくまでその参加者本人が感じている体験として語られたものです。
また、性的指向など、自分の一部を長い間隠して生活してきた参加者からは、
「感情を表に出すこと自体が苦手になった」
という話もありました。
本人の中では強い感情があっても、周囲からは「感情がないように見える」「ロボットのようだ」と言われることがあったそうです。
3.参加者から出た工夫
今回の話し合いでは、参加者が普段行っているさまざまな工夫も紹介されました。
職場の人間関係
ある参加者は、感謝やおわびを伝えるときに、小さなお菓子を渡すことがあるそうです。
もちろん、お菓子を渡せば仕事上の問題が解決するわけではありません。
ただ、
「ありがとう」
「迷惑をかけました」
という気持ちを伝えやすくする方法の一つとして使っていました。
また、自分の意見だけを押し通すのではなく、相手の考えも聞きながら話す「アサーティブ・コミュニケーション」についても話が出ました。
ただし、丁寧に伝えたつもりでも、相手によっては「責められた」と感じる場合もあり、難しさがあるという意見もありました。
スケジュールや生活の管理
予定を忘れないために、
スマートフォンのアラーム
カレンダー
チャットAI
などを使っている参加者がいました。
頭の中だけで考えず、外に出して整理することで、予定や気持ちを確認しやすくしているそうです。
一方で、
「アラームを設定すること自体を忘れる」
という発達障害ならではの困りごとも話されました。
また、チャットAIについても、
「考えを整理するときには便利」
という声がある一方で、
「間違った情報を出すこともあるので、そのまま信じない方がよい」
という話が出ました。
気持ちが高ぶったとき
感情が強くなったときの対処についても、いくつかの方法が紹介されました。
ある参加者は、歩きながら自分の気持ちや体の感覚を観察する方法を使っているそうです。
「今、自分は怒っている」
「かなり気持ちが高ぶっている」
と、一度自分の状態を外から見るようにすると、少し落ち着くことがあると話しました。
また、
ボールを投げる
体を大きく動かす
人のいない場所で変な踊りをする
など、言葉ではなく体を動かして気持ちを外に出す参加者もいました。
家事を少しでも減らす
疲れているときに家事ができないという話も多く出ました。
そのため、
紙コップを使う
割り箸を使う
簡単に食べられるものを用意しておく
など、家事そのものを減らす工夫をしている参加者もいました。
「きちんと生活しなければ」と考えすぎるよりも、生活が完全に崩れない方法を選んでいるという話でした。
ただし、お金がかかることや、食事が偏りやすいなどの問題もあります。
4.まだ答えが出ていないこと
今回の会では、話したからといって、すべての問題に答えが出たわけではありません。
自分の生活と家族の介護
自分自身も体調や仕事の問題を抱えている中で、親の介護もしなければならない参加者がいました。
「自分の生活だけでも大変なのに、家族のことも考えなければならない」
という負担が語られました。
どこまで自分で行い、どこから外部の支援を頼るのかについては、簡単な答えは出ませんでした。
職場で孤立してしまうこと
障害を職場に伝えて働いていても、人間関係の問題がなくなるとは限りません。
特定の同僚との関係が悪くなったり、
「この人ならできる」
と思われて仕事を任されすぎたりすることもあるという話がありました。
障害を伝えることと、安心して働けることは、必ずしも同じではないという経験が共有されました。
転職や働き方への不安
仕事を辞めた後、
「仕事をしていなかった期間を面接でどう説明するか」
という不安を持っている参加者もいました。
また、在宅勤務についても、
「人の目がないと、自分で仕事のペースを管理できるか不安」
という話がありました。
通勤がないことは楽でも、自分で生活と仕事を管理する難しさがあります。
自分の気持ちが分からなくなること
長い間、自分の障害や性的指向などを隠して生活してきたことで、
「自分が何を感じているのか分からなくなった」
という参加者もいました。
本当は怒っていたり、悲しかったりしても、それを言葉にすることが難しいそうです。
この問題についても、すぐに解決できる方法は見つかりませんでした。
5.今回の話から見えてきたこと
今回の会では、同じ「職場で自分を隠す」という行動でも、人によって感じ方が違うことが分かりました。
ある人にとっては、
「仕事中だけ役割を演じることで、自分を守れる」
という方法になっています。
一方で別の人にとっては、
「できる人を演じ続けることで疲れ切ってしまう」
という問題になっていました。
同じ方法でも、その人や職場の環境によって、助けになることもあれば、負担になることもあります。
また、人とのつながりについても、
「一人だけを頼るのではなく、相談できる場所をいくつか持つ」
という考え方が出ました。
友達、職場の人、地域の知人、支援者、自助会など、相談先を一つに集中させないことが助けになる場合があります。
一方で、人間関係を作ること自体が難しい人もいます。
そのため、「相談先を増やせば解決する」と簡単に言える問題でもありません。
相談窓口についても、
「困ったときに電話したが、なかなかつながらなかった」
という経験が語られました。
そのため、チャットAI、知人、自分なりの気持ちの整理方法など、いくつかの手段を組み合わせている参加者もいました。
6.まとめ
今回のウェルカムでは、職場の人間関係や、「つらくても平気なふりをしてしまうこと」について多くの話が出ました。
職場では自分の一部を隠して働く方が楽だという人もいれば、それを続けることで休みの日に動けなくなるほど疲れてしまう人もいました。
人との距離、障害を伝えるかどうか、相談の仕方などにも、一つの正解はありませんでした。
参加者からは、お菓子を使って感謝を伝える、アラームやAIで予定を整理する、体を動かして気持ちを落ち着かせる、家事を減らすなど、日々の生活の中で実際に試している工夫も紹介されました。
一方で、介護、職場での孤立、転職への不安、自分の感情が分からなくなることなど、答えが出ていない問題も残っています。
今回も、それぞれの経験や工夫を持ち寄りながら、「自分の場合はどうだろう」と一緒に考える時間となりました。